2015年2月19日木曜日

ショートトリップ(演奏 : なごり雪)

先週末、欧州生活最後(人生最後というわけではないと思いますが)のショートトリップに出かけてきました。

スイス国内ではありますが、友人夫妻の案内で、友人の愛してやまない故郷の町シオンへ。

シオンにはこれと言ってアイコニックな観光名所があるわけではないのですが、趣のある旧市街の他に、町を見下ろす2つの丘があり、そこには城と教会が建っています。

あまり急がず、ゆっくりと観光しました。



非常にジブリーな形状の塔。
名前までジブリーで「魔女の塔」
伝説的にはスケアリーで、つまり魔女狩りで拷問が行われていたという曰く付き。

※韻を踏んでみましたがジブリーなんて形容詞は知りません。

元々は遠くに見える丘の上のお城から続く城壁で繋がっていたようで、日本のお城的表現に倣うと二ノ丸、三ノ丸といったところでしょうか。



この遠くのお城にえっちらおっちら登って、隣の丘の教会越しに崖下を臨むとこんな感じです。



教会側の丘に登り直して、またしても崖下を臨むとこんな感じです。


山に挟まれた土地で、結構広範囲におよび斜面という斜面にひたすらぶどう畑があるという土地。

しかしこれだけあるのに、日本へのスイスワインの輸入があんまりないという事実。

実はこのシオンを州都とするヴァレー州に住む人は、すべからくヴァレー州を世界一素晴らしい場所と考えているようなのです。

例え国境を越えてフランスなどに住んでいても、毎週末のように長い時間をかけてひたすら帰ってくるようです。
やんごとなき事情があって長期間帰れなかった日には、メンタル的に弱ると言いますからビックリです。

※広く統計をとったわけではないので、話半分程度でご理解ください。

かく言う私の友人も出来る限り毎週末、車で約2時間をかけて帰るとのことで、もはや、ある意味尊敬します。

そんなわけで、きっとワインの現地消費率がものすごく高いのではないかと推測しています。


ところでそんな場所へ旅行するにあたり、我が家としてもお世話になるわけですので、何か手土産でもと考えていました。
ところがこの選択が恐ろしく難しいことに気づきます。

スイス土産の三種の神器は、チーズ・ワイン・チョコレートです。

しかしこれら全て、ヴァレー州のものでなければダメだという可能性が高いわけです。
チョコレートならもしかして…と思いましたがリスクは否めません。

地元でヴァレー産のワインを買って持っていく、とも考えましたが、それじゃまるで東京駅で赤福を買って、伊勢の友人の土産にするようなものです。

結局熟考の末、ヴァレー州には絶対生えてなさそうなオリーブをば!ということで、僕のお気に入りのギリシャはクレタ産のオリーブオイルを贈りました。

※喜ばれたかどうかは全く不明です。


さて、このシオンの街の近くにサン・ベルナールという場所があります。
これはフランス語読みですが、英語の発音っぽく読みますと、セント・バーナード。

犬好きで勘の良い方はピンと来るかもしれません。
首からリキュールの入った小さな樽をさげ、雪山の遭難者を発見して助ける雪山救助犬。
実際に近代まで2000人以上救助したようですが、行き詰まった吹雪の中で大きな犬影、セント・バーナードの物語はこの場所で起こったそうです。

子供の頃には、ヨーロッパの方のどこかの山で起こったことと認識していたので、急に現実感が目覚め、妙に感慨深いものがあります。

「アレは、ココなのかっ」

ちなみに僕が頭の中でイメージする雪山と救助犬のセントバーナードは何故かアニメです。どうしてだろう。


さてはて。

こうして濃ゆい週末を過ごし、今週は少々疲れ気味でございます。

雪はまだ沢山残っていますが、天気、気候共になんとなく春に向かっているように感じます。

こうやってブログに書いてすぐ大雪が降ったことが以前ありましたが、ここで一つ今年初の演奏動画を。





僕がこの地を去るとき、なごり雪は降るのでしょうか。

2015年2月18日水曜日

ウクレレ弾きとしてはミラクルな出逢い

僕は欧州に来てこの方、旅先でピンバッジを買うことを自らに課しております。

基本的には訪れた国の国旗のピンバッジです。それもできるだけ古臭くて薄汚れたものを探します。
あまりに綺麗なピンバッジでは、アマゾンなどで簡単に買えてしまうので、可能な限り差別化したいからなのです。

土産物屋のショーウインドーで年月をかけて日に焼けてしまっているようなものが理想です。そしてシンプルかつサイズ感が同じものが良いのです。

しかしながら、最近はピンバッジなどあまり流行らない商品のようで、見つけるのに難儀します。

あったとしても、デザインが近代的だったり、無駄に大きい国名や地図がくっついていたり、「あなたの国と私の国」的なダブル国旗だったり、意外と容易くありません。

ただ、重要なのはあくまで旅を楽しむことで、ピンバッジを探しに来ているわけではないので、過剰な努力は禁物です。
いい歳こいているので、分別と目的をわきまえます。

そうなると理想のものに出会えるのはかなり低確率になります。その場合はもちろん妥協するわけですが。


ちょっと話が逸れますが、僕は前々からピンバッジコレクターだったというわけではありません。欧州に来るまで、まるで興味がありませんでした。

しかもこちらにきて興味があったと言っても、ほぼ国旗オンリーだったわけなのです。
とは言え、やはりこの年月でピンバッジを探す目が肥えたからなのでしょうか。
昨夏、スイスの骨董市に出かけた際に運命的な出逢いを致しました。

それがこれです。


何故これがスイスに。

もしかしたらギターを目指したデザインだったのかもしれませんが、描ききれなかったであろう弦の数、抱え具合は間違いなくウクレレ。

そして絶対にAm7しか弾けない、和菓子好きの猫型ロボット。

これまでちょくちょく、特にお伝えしてきませんでしたが、僕は祖父から脈々と続く大のあんこ好き。
特にどら焼きにかける情熱は、なかなかのもの。

その昔、大阪出張で空いた時間にしたのは大阪の食文化探求ではなく、何故かデパ地下のどら焼き探検。

渡欧前に、ご挨拶がてら会社で配ったのはどら焼き、好評、歓喜。お財布は傷心。

イギリス時代、ロンドンに行っては、日本に比べて遥かにお高い吉兆のどら焼きを、毎度購入すること躊躇なし。

欧州滞在を通じて、ヨメにどら焼き作成司令→作成依頼→作成懇願を幾度となく敢行。

まさかどら焼きの達人が、ウクレレを抱えているとは。なんたる神々しい姿。

この、僕に発見されるためにここにいたんだね感。若干大いに気色悪いですが、僕が小学生なら誰にもナイショの秘密のボックスに保管するようなシロモノです。

そして、僕がおきゃね持ちなら誰かにこのウクレレを模したピアノブラックのウクレレをオーダーしたいくらいです。

話が逸れに逸れました。


そんなわけでほぼ妥協ですが、集めた国旗のピンバッジがこちらです。



イギリスの重複ぶりが半端ありません。
一つ、こんな国旗はない!と思われるものがありますが、これはやはり「イギリスのハワイ」の呼び声高い南部のコーンウォール地方の旗。
もともとは別国家だったらしいのです。

漫画『マスターキートン』をご存知の方は、両親の離婚で日本を離れた太一が、少年時代を過ごした場所です、と言えばわかるでしょうか。作中、結構よく出てきます。

そして、ピンバッジを買い忘れてしまった国が、アイルランドとドイツ。

ギネスビールの工場を訪ね、黒ビール一色だったアイルランドのダブリン。
アルトビールやケルシュなどのビール三昧だったドイツ旅行。

麦酒による不覚か!?いやいや。。。


さてはて。

複数回行った国もありますが、我ながら、意外と少ない印象です。

あまりマニアックな国に行ってませんね。しかし、この原因は明白です。

イギリス・スイスとも食文化に恵まれている国とは言い難く、故に旅行のテーマが「おいしいものを食べる」というテーマから全くブレなかった。

これに尽きます。


・・・そりゃ、アンパンマンだがね。


PS
そのうち、欧州で食べたものの記事でも上げようかと思います。

2015年2月15日日曜日

さてさてさて。

さてはて。

色々とございましたが、なんとかなりそうなこともありまして、地味に書き書きを再開致します。

気がつけば帰国まで残り一ヶ月になっております。たぶん。

未だに完全に正確な日程が決まっていないという、ややアヴァンギャルドな状況ですが、ビザの期限というものがあるので帰るでしょう、きっと。

さて、思い起こせば2008年の9月からの海外生活。
当初英国2年の予定が、1年伸び、半年伸び、スイスに移って3年伸び。

一般的な日本企業の駐在員であるならば、前例があり、前任者がおり、経済的にも会社に手厚く保護されたプログラムになります。

ただ僕の場合は残念ながら全くそうではなく、始めは誰一人知る者はなく、各場所でのフロンティアが必要で、決められた会社の手厚いプログラムもなく、経済的には日本の頃より厳しく、なかなかに噛みごたえのある生活でございました。

その分、駐在員の皆様よりも幅広く、グッと面白い経験や人脈を得ることができたと思わなくもありませんが。


そんな生活が6年半。
園児が中学生になる年月。
人生が65年だとしたら、その約1割。

今思えば、長いようで短かった、こともなく、普通に長かったという趣きでございます。


そもそも僕は日本と日本語が大好きで、昔から外国語がとても苦手でございました。

しかし一方、無い物ねだり、海外で活躍する日本人が輝いて見え、そしてそういう方々が数多く現れ出した年代であり、似ても似つかぬ自分にコンプレックスがございました。
まー、それが何とも嫌であったので、何とかしたかったのです。

コンプレックスを克服する方法は、一つではなく、色々とあると思います。

僕は自己啓発本等がかなり嫌いですので、僕の話もハナシ2割程度で聞いて頂きたいですが、僕のような海外適応能力の低い人間だからこそ、海外で苦労するべきだと思ったわけなのです。

非常にシンプルで愚直な方法です。

コンプレックスに真正面から向き合わざるを得ない状況に、自分を陥らす。

なんたるマゾヒスティックと思うざんしょう?
いやいや、これは自分による自分へのサディスティック行為なのです。

なんのこっちゃねん。


さてさて、僕はこの年月で何を得たのでしょうか。

かけがえのない経験。
かけがえのない友達。
かけがえのない四弦。

美しい。ホントに。


かけがえのない贅肉。

必要ない。ホントに。

先日久しぶりに渡欧前のアルバムを開いてみると、誰なんだこれは!?というスリムな自分が。

今の僕は、ただのアンパンマンでございます。

"飛べないアンパンマンは、ただのデブさ。"

御意にございます。



さて、ちょっと正気を取り戻しまして、この年月の間に得たもの全てを回想。

それらは自らの人生の糧となる。
それらは自らの人生の肥やしとなる。

インプットとアウトプットが、食べ物とク◯が、まさかの同義で使えそうな雰囲気に愕然としながら、思うことは約一つ。

ただ、僕が知らなかった世界を一つ打ち消したということです。

これまで「苦労してきたんだよ、僕は」的なことを述べてきたように思えるでしょうが、お伝えしたいことは実は真逆のことです。

細かい例外を無視して、敢えて画一的に断言するならば、海外で頑張ることと、日本で頑張ることにそれほど違いはありません。

ただ、そのことを理解するためには、どちらも経験しなければなりません。そのことに気づきました。

情報に溢れる昨今ですが、頭でわかっている結論と、実際に身体で感じた結果とは純然たる差があります。

"そして、ただ、そのことを確認した。"

6年半を一言で言えば、そういうことになるのでは、と思います。


さてさて。

最近、ウクレレイベントの情報を見ても、参加できる日程のものをちらほらと見かけます。

信じられないような、嬉しい限りのような、そんな不思議な現実感。

「このライヴはいける。このワークショップもいける。このイベントはギリで行けない。くやし〜なー。」

「いいのか?ウクピクとか行っちゃってもいいのか?」

日本のウクレレシーンの片隅に、舞い上がった阿呆なおっさん一人を受け入れるだけの余裕があれば、コレ幸いでございます。

みなさま、いつかどこかで。
どうぞよろしくお願い致します。




冬のスイスから。


"枯れ木に花を咲かせましょう!"

2015年2月1日日曜日

賢者の贈り物

あくまで趣味の範疇ではございますが、しばらくちょっとした機械いじり的なことをしておりました。

3桁に届かんかという僕の相当長生きな祖父、よりも年上と思われる懐中時計を色々と頑張りまして、一つめでたく形になりました。




スイスっぽいでしょう?
結構ごっついのですが、状態は良く、愛い奴でございます。

ただこのまま懐に忍ばせると不用意に落下させる恐れがあるので、保険としてズボンに引っ掛けるための懐中時計用の古い鎖を買いにいきました。

ちょうど街のアンティーク時計屋さんにこの鎖がたくさん入荷したという情報をキャッチしたので。
昨日の朝のことです。


さてはて。

「懐中時計用の鎖を買いに行く。」

大正やら昭和初期の薫りがプンプンするフレーズですね。現代社会では、あまり耳慣れないシチュエーションでございます。

そんな方でも『賢者の贈り物』のお話をご存知なのではないでしょうか。


※クリスマスのある夫妻の話。

夫が大切にしている懐中時計に繋ぐための鎖を買ってあげたいと、髪の毛を売った妻。

妻の長く美しい髪に差す鼈甲の櫛を買ってあげたいと、懐中時計を売った夫。

結局どちらも役に立たなくなってしまったものの、本当に大切なものにお互いに気付いた夫妻の話です。


昔、この話を読んだとき、子供だった僕は首をかしげました。

「髪の毛はまた生えてくるからいいじゃんか!なんとなく女の人ってズルくないか!」

なんとも出処に覚えのない女性不信だか、ただ無粋な子供らしさだか、というようなところです。

そして何が言いたいかと言いますと、実は僕の懐中時計用の鎖を買うためにヨメの髪の毛をバッサリ切りました。


…ということではなく。


アンティーク時計屋さんで、鎖を選んでいたときに面白いものを見つけました。



これです。

僕自身はこの茶色い紐状のものを買ったわけではないのですが、懐中時計用の金属製の鎖と同様の役目を果たす紐です。

この細かく編まれた紐ですが、材質はなんだと思いますか?



実は、髪の毛なのです。

かなり古いもので、言うなればアンティーク髪の毛ですが、ほつれ傷みなどなく美しいものです。

現代でも綺麗な長い髪の毛は売れるようなのですが、いわゆるエクステンションなど、ヘアスタイルを作る上で髪の毛の代用として使われることが多いのだと思います。

しかし昔は、髪の毛は身近で丈夫な「繊維」として本気で扱われたときがあったんですね。
そして、工芸として細工する職人さんがいたようです。この状態で残っていますし、良い仕事だと思います。

さてはて、そんなこんなで感銘を受けた現代の僕ですが。

あの『賢者の贈り物』に出てくる妻の髪の毛は、売られた後、懐中時計用の紐になったのかもしれないな、と、やはり無粋な想像をしています。

アンティークな年齢に足を突っ込み始めたのにもかかわらず、変わらぬ傾向です。