あくまで趣味の範疇ではございますが、しばらくちょっとした機械いじり的なことをしておりました。
3桁に届かんかという僕の相当長生きな祖父、よりも年上と思われる懐中時計を色々と頑張りまして、一つめでたく形になりました。
スイスっぽいでしょう?
結構ごっついのですが、状態は良く、愛い奴でございます。
ただこのまま懐に忍ばせると不用意に落下させる恐れがあるので、保険としてズボンに引っ掛けるための懐中時計用の古い鎖を買いにいきました。
ちょうど街のアンティーク時計屋さんにこの鎖がたくさん入荷したという情報をキャッチしたので。
昨日の朝のことです。
さてはて。
「懐中時計用の鎖を買いに行く。」
大正やら昭和初期の薫りがプンプンするフレーズですね。現代社会では、あまり耳慣れないシチュエーションでございます。
そんな方でも『賢者の贈り物』のお話をご存知なのではないでしょうか。
※クリスマスのある夫妻の話。
夫が大切にしている懐中時計に繋ぐための鎖を買ってあげたいと、髪の毛を売った妻。
妻の長く美しい髪に差す鼈甲の櫛を買ってあげたいと、懐中時計を売った夫。
結局どちらも役に立たなくなってしまったものの、本当に大切なものにお互いに気付いた夫妻の話です。
昔、この話を読んだとき、子供だった僕は首をかしげました。
「髪の毛はまた生えてくるからいいじゃんか!なんとなく女の人ってズルくないか!」
なんとも出処に覚えのない女性不信だか、ただ無粋な子供らしさだか、というようなところです。
そして何が言いたいかと言いますと、実は僕の懐中時計用の鎖を買うためにヨメの髪の毛をバッサリ切りました。
…ということではなく。
アンティーク時計屋さんで、鎖を選んでいたときに面白いものを見つけました。
これです。
僕自身はこの茶色い紐状のものを買ったわけではないのですが、懐中時計用の金属製の鎖と同様の役目を果たす紐です。
この細かく編まれた紐ですが、材質はなんだと思いますか?
実は、髪の毛なのです。
かなり古いもので、言うなればアンティーク髪の毛ですが、ほつれ傷みなどなく美しいものです。
現代でも綺麗な長い髪の毛は売れるようなのですが、いわゆるエクステンションなど、ヘアスタイルを作る上で髪の毛の代用として使われることが多いのだと思います。
しかし昔は、髪の毛は身近で丈夫な「繊維」として本気で扱われたときがあったんですね。
そして、工芸として細工する職人さんがいたようです。この状態で残っていますし、良い仕事だと思います。
さてはて、そんなこんなで感銘を受けた現代の僕ですが。
あの『賢者の贈り物』に出てくる妻の髪の毛は、売られた後、懐中時計用の紐になったのかもしれないな、と、やはり無粋な想像をしています。
アンティークな年齢に足を突っ込み始めたのにもかかわらず、変わらぬ傾向です。
やはり時計の短針が遅れると言うのはもう、寿命が迫って来ていると言うことなのでしようか.. 25年も苦楽を共にしてきましたがもっと大切にしてあげればよかったなぁと。ハイ次郎さんの時計はこれから第2?の人生を謳歌するのですね~素敵です!
返信削除はい、その下界に住むものです
下界に住む者さん
返信削除コメントありがとうございます!
どのような時計なのかわからないのでなんとも言えませんが、作り手がしっかりわかるものであれば、修理できると思います。
ただそのための費用と、ご自身の使い続けたい気持ちを天秤にかけて、寿命が決まると思います。