2015年4月26日日曜日

Ancestor's Ukulele vol.5/6

さて、工房にて一通り試奏をしました。

文中お察しの通り、濃ゆいキャラの僕の心は、やはり濃ゆい音色の4Mにて決まっておりました。
自分のキャラを参考に決めたわけではありませんが。

僕の知る限り、このウクレレは坂井さんが、アピラック氏の求めるものを自身の設計思想に基づいて具現化したものだと聞いています。

来日していたアピラック氏が、東京ハンドクラフトギターフェスで数々のウクレレを試奏し、最終的に「この会場の中で僕にとっての最高のウクレレはこれだ」と告げたのが、坂井さんのウクレレでした。

2人はオータサンを非常にリスペクトする演奏家と製作家であり、そういう意味で引き合うのは論理的かもしれませんが、しかし当然のことだろうか?と思うのです。ジャジャジャーン!運命的。

そのときはまだAncestor's ukuleleは現在の形状・仕様・設計思想とは異なり、フルモデルチェンジする前でした。

しかし坂井さんはそのときアピラック氏が気に入った仕様をそのまま作るのではなく、新たにつくっていったんですね。

全く骨のある御仁です。

※骨はありますが、軟骨ではなく、ぼんじり派です。ええ、焼き鳥の話です。
坂井さんは無類のぼんじり好き、実はこの後一緒に飲みにいって確認しました。全くのボンジラーです。
以上、プチあんせすたぁ情報でした。


このような過程でできたウクレレを当のアピラック氏御本人が、物凄く気に入っているようです。この間SNSを使ってちょっとだけコンタクトしてみましたが、愛機への愛情が伺えます。

そして、当のAncestor's ukuleleにとっても、非常に意味のあるモデルだったと思います。それがまわりまわって来て、僕もお願いすることにしました。


さてさて、それでは決断のあとのプロセスです。
いわゆる仕様の相談です。

今回の訪問のトピックの一つに、実際の材料を見て打ち合わせ、というのがありました。

僕はかなり前から、もう1年以上前から、次のマホガニー製のウクレレの飾りをどうしようか、何度も何度も夢想していました。
俗に言うとアブナい人です。

松井ウクレレは杢は派手ながらトータル的には激シブな風合いなので、逆にキラキラッとした宝石箱みたいなイメージがいいな、とか。

ドカンと意味深なインレイを入れてみたらどうだろう、とか。
はじめは派手派手な思考でおりました。

しかし、マホガニーはあまり派手な意匠が似合わない材であり、美人は3日で飽きるの言葉あり、また友の死などを経験して思考がミニマル化したお陰か、徐々にシンプルなデザインへとシフトしていきました。

「杢も装飾もほどほどでいいんだよ。大切なのは音なんだから。」

そう思っていたら、坂井さん曰わく。

「じゃ、コレでいいんじゃないですか?この後、岸和田のオハナさんに納品しますよ。」

一理あります。いえ、五理くらいあります。

坂井さんは僕のウクレレに使うための標準のホンジュラスマホガニーの材を用意しておいてくれましたが、このアピラック氏シグネチャーモデルには「シンカーホンジュラスマホガニー」という長いこと水中に保管されていた材が使われています。

派手な杢ではないものの木フェチ度は高く、材料としての安定度が高いです。そしてそのとき工房にはこの材の在庫がありませんでした。

4Mの基本デザインは元々マーティンスタイルを基調としたクラシックな装飾です。
それも嫌いではありませんが、もう少しシンプルなデザインでいきたかったのでやはり改めてつくってもらうことにしました。

頭の中で意匠を組み立て直します。

※わかりやすいように再掲載

まずは指板のセンターラインを省き、するとスノーフレーク型のポジションマークは浮いてしまうのでラウンド形状に変更。ボディのボトムのヒゲも省略。
ただただ至極シンプルなことになっていきます。

しかしだからといって、ただのシンプルモデルにしたいわけではないのです。もはや軽く駄々っ子のようになってきました。細かいイメージはないくせに、一目で自分のモノだと思えるものがよく、でもシンプルがよい。なのに貝もちょっといれたい。

松坂牛のお店に行って、脂の少ない肉を頼むような矛盾。自分でも何を言ってるんだかわからん状態です。

材料や装飾のパーツに使うものなどを見せていただき、坂井さんの経験から、様々な解説と提案を受けて、唸りながら考えます。

結局、工房標準のホンジュラスマホガニーの箱に、かねてからこれだけはとお願いしていたホンジュラスマホガニーのネック、真っ黒なエボニーの指板とブリッジを素材としてセレクト。
飾りはシンプルな指板周り、ロゼッタは細めで、という指定であとはお任せと相成りました。

実はそんなやりとりを横で温かく見守ってくれた御仁がおります。
坂井さんの友人かつ先輩かつお客さんの方で、ちょっとした事情で今回参戦していただきました。

落ち着いた優しい方ですが、お仕事も少し特殊で僕も好奇心をくすぐられていろいろと質問してしまいました。
やっぱりヒトとの出会いはいつの時も楽しく刺激的でございます。

一通りの話も終わり、夕方を迎え、この野郎ども3人でこの後焼き鳥屋に向かうのでした。



しかしこのあと急展開がっ!!!
とまでは言いませんが、まだこのままでは終わりません。
次回、最終章!
とまでいうと大袈裟ですが、次で一区切りします。

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