2015年5月1日金曜日

Ancestor's Ukulele vol.6/6

車でやきとり屋に向かう一行。
のどかな風景の中を車で走ります。

着いたのは駐車場の沢山あるやきとり屋。
大した都会人でない僕ですが、実は車で呑みに行く文化に触れたことがなく、なんだか新鮮。
もちろんハンドルキーパーをお願いしての儀でございます。

乾杯をして早速話し込みます。
3人ともイイ歳こいていますし、割と普通でない道のりを経ておりまして、さらに初対面に近いですから、話題に事欠きません。

ウクレレの話、そしてお人生のお話。
やはりオンラインよりオフライン。
熱さと正直さが違う至福の時です。

とは言っても、酔っ払いオヤジのロックンロールトークというよりは、低音響くウッドベースのようなトーク。

僕も坂井さんも在学中に別の道を見いだし、「大学やめます」と言ったことがある人間だということが発覚しました。

その後の展開は全く違いますし、業界も異なる上に、彼は独立し僕は会社員ですので同じではありません。
ただ若かりし頃のあのときの気持ちを省みるに、同じような記憶を持つ人にウクレレに頼むとはなんとも感慨深いことです。
「類は友を呼ぶ」のコテコテの典型例です。

自分の目指すウクレレ、販売の方法、こだわるところ、全くこだわらないところ、大切なもの、どうでもいいもの、低めのトーンで話す坂井さんです。

世にウクレレの製作家というのは結構沢山おります。その中でウクレレ製作をフルタイムで継続して商売にしていくのは簡単なことではないと思います。

そしてウクレレは「楽器」であり、木工として一生懸命丁寧に作った一点モノです、では済まされないものだと思います。

その点、楽器としてのウクレレをひたすら、若干おかしいんちゃう?というくらい追求し、しかし人格は破綻していない希有な方。
一見、偏屈。でも実は懐も結構深いとでも申しましょうか。

たぶん、目の前で「おまえのウクレレはダメだ!」とか言っても怒らないと思います。ただ、どうダメなのかフツーに聞かれちゃうと思いますが。

ウクレレ製作家としてのスタンスは、とある車メーカーの主任デザイナーがインタビュー記事で語った感じに近いと個人的に思います。

「市場の最大公約数は狙わない、消費者のニーズだけを軸に開発はしない、私たちが練りに練って作り上げたものを提案し、それに共感していただいたユーザーに買ってもらえればよい。」

似ています、とても。

さてさて、齢を重ねたおっさん達のトーク。
愚痴は皆無。苦労した分だけ笑いとばせる話があるものです。
あっという間に夜も更けゆきました。


次の日の朝。
昨晩ほんの少しキャパオーバーかと思ったアルコールはすっかり消えており、快調です。

「明日も時間があれば、どうぞお越しください。」

昨晩の坂井さんの言葉に甘え、ホテルから元気に徒歩で工房へ。
道中、帰りは送ってもらおうと固く決意しました。


引き続き快晴の美濃加茂。
気持ちいいったらありません。笑顔もこぼれます。

坂井さん自身所有のテナーウクレレをアンプにつないでもらい、工房で弾かせてもらいました。


手が小さくても、思ったよりテナーサイズが弾けると気づきます。もちろん絶対無理な運指もありますが。
そして、大きな音で弾けるのがたまりません。めちゃくちゃ楽しゅうございます。売り物ではないので、少しだけ大胆に弾けますし。

談笑しつつちょこっとレクチャーしてもらったり、再び4Mに触らせてもらいつつ、時間は過ぎていきました。

そして、またまた仕様の話になりました。昨日も話をしましたが、まだハマった感じがないというか、漠然と何か少し足りない感覚だったのです。

「シンカーホンジュラスマホガニーって、やっぱりもうないんですよね?」

おもむろにもう一度聞いてみました。

「そうですね。ないんですよ。あ、じゃ、ちょっと木材屋さんに電話して聞いてみましょうか?」

ちょこっと工房の外へ出て行く坂井さんです。
電話するのは、坂井さんも信頼を寄せる業界では有名な木フェチ御用達のあの木材屋さんです。

工房でボーッと待っていると、外から何やら聞こえてきました。

「えっ!本当ですかっ!!」

なんだかいい感じの声がうららかな春の日にこだましました。

そして戻ってきた坂井さんが、興奮気味に言いました。

「えらいものが、ありましたよ!」

まず、前述のシンカーホンジュラスマホガニーがありました。ブックマッチなしの一枚で表裏板とれる全くのナイス材です。

しかし、真打ちは別にいました。

その名も、キルテッド・シンカー・ホンジュラス・マホガニー。

(※写真はギター用に製材されています)

長い、長いぞ。

沈めてあったホンジュラスマホガニーに、ゆらゆらとした杢がでているものです。言わずもがな、木フェチな品です。

お、おかしい。

杢にこだわらず、シンプルに生きようと思っていたのに。

今度こそ、只の柾目な人生が待っていると思っていたのに。

最後にスゴいものを差し込まれました。イイ意味で。

一応、杢無し真っ直ぐな人生を思い描いて心の中で抵抗してみましたが、無駄というもの。

これはつまり「出会い」なのだろうと、誠に都合よく解釈。

幸いなことにこのキルテッドの杢は、カーリーコアの波乱万丈な感じと比べれば、ほどほどに波のある堅実な人生、じゃなくて杢です。

来た甲斐のある結末に満足したところで、タイムアップ。

坂井さんに駅まで送っていただき、名残惜しく美濃加茂の地を後にしました。

今度は車で来て、城や古戦場跡を見にまわりたいところです。



さて、長いこと書いてきたこのお話もこれにて終わりです。

当初思い描いていたよりも内容がないかもしれないと危惧しつつ、関係者各位にご迷惑がないか恐れおののきつつ、結びとさせて頂きます。


僕のウクレレのその後については、写真たっぷり文字極少なめで、また次回に。

それでは長々とお付き合いありがとうございました。

おしまい!

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