2014年11月11日火曜日

大人の階段

会社の同僚、フランス人女性のCさん。
美形ではないのですが、綺麗な顔はしていますし、ユーモアもあり、フランス人にしては仕事に厳しく、人間として好きな部類です。つまり良好な関係の同僚なのです。

ただ一つ、こういうことを言うのは非常に失礼だと思うのですが、顔の輪郭と短い髪型そしてメガネの感じが、どうしてもヤッターマンに登場するボヤッキー風に見えてしまうのです。かなり綺麗なボヤッキーですが。

とはいえ、女性に対してホントに失礼なヤツです、僕は。彼女がボヤッキーならば、僕なんてさしずめトンズラーか、おだてられて木に登ってるアレ程度のものです。

さて、そんな僕の中で彼女のキャラクターが鮮烈に固定されてしまったせいで、逆にだからこそ首をもたげてきた好奇心があります。

「もし彼女が長い髪でコンタクトだったら一体どうなるんだろう。」

長い間、さほど強くない純粋なただの好奇心を抱いていた僕ですが、先週、つい会話の流れで勢いにのって、そんなときがあったのか聞いてしまいました。

「なーに?なんでそんなことを聞きたいの?私のこと好きなの?」

デスヨネー。もちろんそう言っている方も冗談なのですが、そういうことになっちゃいますよね。でも、ボヤッキーとも言えません。

「はいはい、そうそう。大好きだから、見てみたいんだよ。写真とか持ってきてよ。」

真っ向からいなす他ありません。

そこで、話を聞いていた我が部署のゴッドマーザー的存在、イタリア人のM女史が僕に向かって口を挟みます。

「また、なにスケベなこと考えてるのっ。」

何がスケベかわかりませんが、多分口説いているかと思われたんでしょう。
白昼堂々会社でそんなことしませんから。家庭の平和のために夜に隠れてもしませんが。

「違うわい。」

少し遠くで、別のフランス人の同僚Eさんも笑ってます。

余計なことを言ってしまった感でいっぱいでしたが、どうも言われた方は喜んでいる感じだったので、ホッとしました。

そしてすっかり忘れていた次の日、昼休みを見計らって、Cさんは10枚程度の写真をスマホから見せてくれました。

「ボヤッキーというよりドロンジョだ!」

などと口に出して言うことはなく、しかし大分可愛らしい彼女の昔の写真を見て満足。可愛いとひとしきり賛辞も述べて、一件落着しました。

したはずでした。

その日の夜、みんな退社して職場に3人ほどになったとき、ゴッドマーザーのM女史が僕を呼びました。

「ちょっと、ハイ次郎!この写真見なさいよ。」

M女史は僕と同じくらいの息子がいるので、結構な古い写真でしたが、可愛らしい少女の写った小さな写真が。
M女史その人です。いやはややっぱり可愛らしいので、もちろん心からの賛辞を述べます。

「でも、昨日僕のことスケベ呼ばわりしなかった?ま、いいか。」

ところがこれで終わりません。

その2日後、そんなことがあったなんてもうだいぶ忘れた頃。
昼休みが終わって席に戻った僕は椅子の上に紙が2枚ほど裏返して置いてあることに気づきました。

回覧なら通常机の上に置いてあるはずです。おかしいと思いながら、手に取ってみると、そこには満面の笑みを浮かべる可憐な少女の写真が4枚ほどカラーコピーされていました。

ふと見ると、上の方に手書きで「だーれだ?」と書いてあります。

さすがに4枚もあれば、面影で誰かなんかすぐわかります。

こないだ笑っていたフランス人女性のEさんです。高校生の子持ちのお母さんです。

すかさず直行。

「あら、もうわかったの?」

わかりますって。
子どもらしい表情のいい写真です。もちろん賛辞をお伝えしました。

でも、これで気がつきました。
動機が動機とは言え、誰か一人に若い頃の写真を頼むのは、ここじゃあんまり良くない。
聞くときはみんなに平等に。たぶんみんな見せたいのです。そんな女心なのです。

理解した上で声を大にして言いたいです。




「みんな大きくなったけど、まだ少女じゃんか!」




そして僕は少しだけ大人に近づいた気がしました。

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