2014年12月3日水曜日

楽しゅうございました

田尻洋一さんというピアニストがおりまして。
実は今年の3月にもあったので、2度目になるのですが、週末にウチの街でリサイタルがありました。

前回のブログで、僕はウクレレを弾くまで楽器経験が殆どないと書きましたが、その殆どじゃない方の経験がピアノです。
幼少の頃1年弱、遊びに忙しくて滅多なことでは練習しないダメ生徒でした。殆ど何も身につかず、スパルタ先生にいつもダメだし。
結局、ピアノはやめましたが嫌いになることはその後もなかったので、機会があれば音大の友達の発表会なども見に行っていました。そんなに数多くではありませんが。

だからというわけではありませんが、世の中に数多の音大出身者がい
おり、その中でクラシックの演奏家としてのピア二ストでメシを食うことが、如何に難しいかも理解していました。

それ故に、なんだかとても興味惹かれました。
そんな人がどんなことを考えながら仕事をしているのか。ウクレレのこととは関係ないですが。

小さな会場ですし、スイスでは大抵、こういったイベントごとの後にはちょっとした懇親会のようなものがあります。

これはチャンスとばかりに即座にアタック。話し込みました。
一般的なクラシック演奏家のイメージはソフトな人柄でもどこか壁がありそうですが、びっくりするほど正直で気さくな人でした。
初対面からなんだか先生に質問に押しかけにきた生徒になった気分です。

自身の実体験、仕事へのスタンス、目指しているもの。どれも面白い話ばかりで盛り上がりました。
彼は演奏家ですが、職人のような気質の人なので、一つ一つの言葉が自分の仕事へ重なる部分が多くて、一気に魅了されたようです。

…というのが前回のリサイタルで、そんな経緯で今回も迷わず出かけたのでした。

僕も沢山のピアニストを見てよく知っているわけではないのですが、田尻さんの弾き方はとてもユニークに見えます。

全身で感情表現しながら弾くのではなく、背筋は真っ直ぐ、肩の位置は微動だにせず腕から先だけで躍動します。
それゆえ遠目にはものすごく淡々と見えて、演奏家に陶酔する姿を求める人は少し物足りないかもしれません。

でも、「私を見て!これが私の表現する音楽!」というよりも、長い間親しまれてきた曲自体の持つ魅力を引き出す姿勢を感じます。
それに難曲や激しい曲でも姿勢をほとんど崩さず弾くので、むしろ凄みを感じます。
僕のピアノ演奏に関する知識や経験ではうまく語れませんが。

それから、音楽性の絶大なる差があるので比べるべくもないのですが、曲がりなりにも楽器演奏をしている身として愕然とするのはやっぱり暗譜している量です。
田尻さんは全く楽譜を使いません。聞くところによると数百曲は暗譜しているようです。
脳細胞のどこにそんなスペースがあるんでしょう???

そんな記憶力を持つ田尻さんなので僕のことも覚えてくれていました。アレだけガッついて質問していれば…とも思いますが。

そして別れ際の会話。

「日本に帰ってもコンサートに行きますよ。」
「3年以内に来いよ。じゃないと忘れるからな。」
「3年行かなかったら、むしろ僕が忘れてますよ。」
「あ、そもそもね〜。」

全くいろいろと楽しゅうございました。

とりあえず、今までも気にしてはいましたが、ウクレレを弾くときの姿勢をもっと拘ってやってみようかな、と。




リサイタルの後は友人宅でラクレット。旨し。
ウクレレ持参で行って『What a wonderful world』を弾いたら、友達がアノ声で "エア" ルイ・アームストロングをやってくれたのがまた楽しゅうございました。

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