2014年9月23日火曜日

2008年宇宙の旅 〜6年前の僕をかく語りき

祝6周年。

今日でついに欧州生活が丸6年経ってしまいました。イギリスとスイスの2カ国トータルです。

本日9月23日はテニスの日。8月23日はウクレレの日。意味はないけど覚えやすい!


さて、思い起こせば6年前のテニスの日の夜。僕は一人で飛行機に乗って、日本を飛び出しました。フランス・パリ経由のイギリス行きです。

夜10時発のフライトだったので、またはその程度の人望だったので、ヨメの他に見送りは友達2名。

既に人影まばら、蛍の光が流れんばかり、店じまい中の成田空港から飛び立つとき、周りには全然余裕な顔をしていましたが、僕はチビる寸前でした。

怖かったんです、はい。
向こうに着いたら日本人はおろか、知っている人は誰もいない。英語はとっても苦手。誰とでもお友達になれるラテン気質でもありませんが、お仕事しなくちゃなりません。

しかもそれ以前に、飛行機の乗り継ぎをちゃんとできるのか?という実にレベルの低い、しかし本人にとっては切実な問題を抱えていました。

何しろ今まで人任せでついて行くだけ。ピンでやったことがなかったのです。

3列窓側の席に着席した僕は、海外旅行ならばワクワクしてルンルンしてワインがぶ飲みするところ、道端のお地蔵様のように完全に硬直、無言。(一人だから無言当たり前。)

機内食もまともに食べれず、CAにアルコールを頼む気すらおきず、チビりそうなのに膀胱は活動せず、ただ毛穴から脂汗を流し続けておりました。

しかしながら、成田から経由地パリ迄はなかなかの長旅です。脂汗の代謝だけでは水分を放出しきれません。

機内の照明が落とされ、皆が眠りに着いている頃、次第に僕の石造りの膀胱のエンジンがかかってきました。

そこへ来て改めて通路側の座席の二人に目を向けると、どうやら白人のカップル。
通路側の男性は普通でしたが、僕の隣りに座る女性はワールドクラスのご体格をお持ちで、「大関、座席ノ富士、土俵際いっぱい堪えました!」というアナウンサーの声が聞こえんばかり。

そして、その女性はギリギリいっぱいの座席からはみ出るように、愛する男性に覆いかぶさって寝ていました。まるでこの世の終わりのように。さながら掛け布団のように。

一方、違う意味の恐怖で世界の終わりを迎えていた僕は、膀胱の許容量の終わりも迎えていました。

「トイレのために声をかけるかかけないか、それが問題だ。」

若き石像の悩み。揺れる地蔵心。

しかし、目の前の山は越えなくてはなりません。そう、そこに山があるから。

た、たたかえ!僕!

『世界の終わり vs 世界と膀胱の終わり』

この世紀の対決に、数的優位の僕が勝利したのは言うまでもありません。


そんなこんなでパリのシャルル・ド・ゴール空港に着いたのは午前3時前でした。
閉店間際の成田から着いたのは、開店前まだ店主が仕込みすらはじめてないパリ。

案内板にはまだ乗り継ぎ便の情報は皆無で、ゲートはおろかターミナルすらわかりません。
そもそも乗り継ぎってだけでおもらし寸前なのにあまりのハードルの上がり具合です。

同じ便の人も路頭に迷っている感じで、そうなると僕なんか当てもなく宇宙を彷徨う漂流物レベルの存在です。

とりあえずなんとなくの流れに着いて行くと、なけなしの案内カウンターを発見しました。
いや、正確には案内カウンターではなかった気がするのですが、制服を着た人が座っている唯一の場所なので、路頭に迷う人々がドンドン吸い寄せられていきます。
まるでパリに突如出現したブラックホールです。

僕はとりあえずブラックホールの方をしばらく観察することにしました。すると、どうも彼女たちはいい迷惑な雰囲気を醸し出しています。

少し迷いましたが、他に当てもないので努力だけはしてみようと、搭乗券を見せてカタコトの英語で尋ねてみると・・・。

「○※×@&$€,%#.」

というご返答。

そうでした。宇宙を漂う僕が話しかけられるのは所謂宇宙人だけ。地球の言葉など通じるはずもありません。

「ツヨクイキテユケ、コラ」

無理矢理そう言われてると思うことにしました。


・・・・・・・・。


それからの行程は、特筆すべきことは何もありませんでした。

ちょっと懐かしい感じで言うと。

「べつに・・・。」

さしあたり僕を導く親切なおじさん、美女、小人、妖精など現れず、自力で乗り継ぎ便を探し、労働ビザの厳しい入国審査に耐え、イギリスに入国しました。

こうして無事、何事もなく僕のイギリスでの新しい生活がはじまったのでした。


ただそのときの僕は知らなかったのです。
それから3年半後、あのときの宇宙人と同じ言葉を話す国に移り住むことを。

Oh, I'm an alien. I'm a legal alien.




0 件のコメント:

コメントを投稿